鏡に映った自分の顔が、自分に見えないんです。


明らかに誰か、違う人。


なのに、家族と鏡の前に並んでみても、
友達と一緒でも、誰も変に思わないんです


絶対にあれ、私じゃないのに。



だからこの間、問いかけてみたんです。

鏡の向こうの誰かに。


「あなたは誰?」って。


そうしたら相手はニヤリと笑って、
それ以来、鏡には誰も映らないんです。


私はちゃんと、ここに居ますか?





ふーっ


68本目の蝋燭が消えました。




碌な事が無い!


……失礼。

最近ホント、嫌な事ばっかなんですよ。


今日だってね、
学校に着く前に、転んで泥水被るし。

もうホント、ついてない。


ギター弾けば6弦目が切れるし。

虫が服に引っかかって、6本目の足が取れないし。

タロットで占って貰えば、
終わった後に『ごめんなさい、Ⅵのカードが無くなってたわ』とか言われるし。

因みに恋人。何それ酷い。



俺、6になんかあんのかな?って思ってたんですよ。

でも、違ったみたいです。

いや、ある意味あってたんですけど。



今度は、なんか9ばっかになったんです。


お見舞いに行ったら、教えられた部屋は無いし。
末尾が9の部屋番号だったんですけど、
部屋の数をそいつが数えた数字だったらしく、実際は違って。


変な叫び声みたいなのが聞こえたから、
心配して見に行ったら猫が死んでたし。

好奇心は猫をも殺すって事かと。

あ、猫って9つの魂を持ってるとかいうのあるみたいですね。
それの9って事で。


……見に行った俺が悪いのか?



まあ極めつけは、最初の話に戻るんですけど。


今日転んだ理由、驚いたからなんですよ。


俺の前にいきなり狐が飛び出てきて、
そいつの尻尾、9本あったから。



今さら気づいたんですけど、
6と9で、ろく。


……ホントに、ろくな事しか起こらない!




ふっ


69本目の蝋燭が消えました。





この学校には、今じゃ七不思議がちゃんとあるけれど、
先生がこの学校の生徒だった頃は、酷い物だったんだ。



7つ目は、見つからない事。

5つ目は、6つ目が見つからない事。

3つ目は、4つ目が見つからない事。

1つ目は、2つ目が見つからない事。



……つまり、何も無かったんだ。


だから俺たちは思った。

無いなら、自分たちで探そうと。


結局卒業までに出来たのは1つだったけど、今じゃ揃ってるから満足だ。




それで、その、見つけた1つ目の話をしようか。


見つけたというか、起こった話なんだけど


ある年、卒業間近の女子生徒が行方不明になった。

それも、学校の中で。


靴は靴箱の中に残されていたのに、
彼女の姿はいくら探しても見つからない。

何かの事件に巻き込まれたか、
連れ去られてしまったのか。

当然、誰もがそうおもった。


だけど数人の生徒が、
『彼女はまだ学校の中に居る』

そう、言ったんだ。



理由は、その子の机の中にあった、1冊のノート。

そこには、『帰れないの』と、そう書いてあった。


それからさらに、
確かに彼女の筆跡で、
毎日1文ずつ書き足されていく。




警察にも届けは出したけれど、
やっぱりどこを探しても見当たらない。

その内みんな、諦めて
家出したとかで納得したんだ。


だけど、まだ学校に居ると言った内の1人
俺の1つ上の先輩で、同じ部活だった人だ。

その人は、他の人が諦めても、
毎日ノートを見続けて、彼女を探していたんだ。


俺も気になっていたし、
一緒に探していたよ。

先輩たちが……2人共、心配だったから。


何故なら、ノートの文章が、
日に日に不気味な物になっていったからだ


もしかすると先輩も、どうにかなってしまうんじゃないかって思ったから。

だから俺も、一緒に探していたんだ。




ある日、先輩の姿がどこにも見えなかった


いつもの通り、部活が終わった後、
居なくなった子の教室で、待ち合わせていたのに。


俺は1年で、先輩は2年。

1年は片付けがあるから、
先輩は先に、教室に居るはずなのに。

時々、飲み物を買いに行ってた事はあったけど、
その日は、どれだけ待っても来なかった。



下校を促す放送が流れて、俺は諦めて帰ろうとした。

だけどその前に、ノートを見ようと思ったんだ。


先輩が居ないのも、もしかしたら関係するんじゃないか。

そう、思ったから。



開いたノートには、やっぱり1文だけ。


『これを見た人は、
 この学校から卒業できない』


そう書いてあったよ。





もしかしたら先輩も、
彼女と同じに、
帰れなくなってしまったんだろうか。


だったら、俺はどうなるんだ?

焦って、急いで教室を出た。



……良かったのか、残念なのか。

俺は、普通に帰宅できたんだ。



そして、やっぱり先輩は、
その日を境に行方知れずになったままだ。

だけど俺は、卒業できた。


そう、思った。


でも、結局は教師として、この学校に戻ってきた。


このまま、この学校に所属し続けたまま終われば、
確かに俺も、卒業できないのかもしれないな。


……今も、暇さえあれば
先輩たちを探してしまうし。




それで肝心のノートは、
俺が目にしたのが最後で、
どこかへ消えてしまった。


だけど突然現れて、
読んだ生徒が居なくなってしまう。



それが、この学校の1つ目の話。


『留年ノート』


……2人とも、卒業証書だけは、
授与されているけどね。






ふーっ


70本目の蝋燭が消えました。




71.花壇
72.バスケ
73.校庭の桜
74.ホルマリン漬け
75.音楽準備室

76.七つ目
77.泣き虫
78.ダメ
79.ラジオ番組
80.きる