窓の鍵を開けようと、
片手をガラスにつきました。
自分まで手形つけるのかよ。
さっきポテチ食べてたから
手、油まみれなのに。
そう文句をつけようとした時、
ガラスに触れた兄の手が、
妙に滑っているのに気が付きました。
そして、兄が言ったんです。
『この手形、内側についてる……』
カーテンを閉めた時、
部屋には兄も居ました。
だから、その後に付けられたのだと
兄も知っていたはずです。
とりあえずその日は、
手形を落としてから寝ましたよ。
不気味なので、兄の部屋で。
それで次の日、
隣へ行かずに大家さんに話をしに行って、
そこでようやく知ったんですが、
今、家の隣に誰も住んでなかったんです。
フーッ
44本目の蝋燭が消えました。
僕の靴に、よく画鋲が入ってたんです。
それはいつも学校で、
帰ろうと、靴を履きかえようとすると入ってるんです。
いじめかと思ったんですが、
される理由も、
してくる相手にも覚えが無いんです。
それは中学の3年間続いていて、
高等部に上がったら、
鍵付きロッカーが使えるじゃないですか?
で、そっちに入れておけば
さすがにもう無いだろうと、
安心していたんです。
だけど、ロッカーに仕舞っても
やっぱり画鋲が入っていました。
どうしてか不思議だったんですが、
とりあえず僕は、
靴をずっと持ってる事にしました。
袋に入れて教室に置いておく。
移動のある時は、
誰かの目の届く場所に。
そうしていたら、嫌がらせはやんでました
だから安心していたんですけど、
ある日、また入っていたんですよ。
家の、靴棚の中の靴に。
そういえば、それまでいつも同じ種類を
ずっと買い続けていたんですけど、
止んだ時から、違う靴を履いていたんです
靴棚に入ってたのは、
予備で、それまでのと同じだったから
この靴の所為なのか。
そう、思う事にしました。
その靴を買うのを止めてからは
もうそんな目には遭っていません。
一体誰が、何が気に食わなくて
あんなにしつこくやっていたんでしょうか
とりあえずは、
皆さんが同じ目に遭った時は
違う靴に替える事をお勧めします。
ふーっ
45本目の蝋燭が消えました。
これは、私が夜道を歩いていた時の話です
道が狭くて、人通りも少ない場所だから
早く帰りたくて自然と速度は早まっていました。
その道の途中には、
いくつかの脇道があるんです。
そこの2つ目を入って、
私は家に帰るんですよ。
それで1つ目の脇道を通り過ぎた時に、
先の方から、手が伸びているのに気が付きました。
それは道の端から、
次の脇道から誰かが手を振っていたんです。
私が入るんであろう、2つ目。
もしもあの手の持ち主が、
私の家族だったなら、何の問題も無い。
でも、もしも変質者、
もしくは人間では無い、何かだったら?
……私は心霊現象や、
そういった物が好きです。
今、こうしている位ですからね。
でも、自分が怖い目に遭うのは別。
皆さんもそうじゃないですか?
こんな暗い中で、
よく見えない相手に手を振る。
普通は、しない事だと思うんです。
ここで引き返すにしても、
後ろから襲われたらどうしよう。
さっきの脇道の先は、行き止まり。
どこかの家に上がらせて貰えればいいけど
駄目だったら、逃げ場はない。
……とりあえず、家に電話しよう。
迎えに来てもらおう。
そう思いました。
電話に出たのは弟で、
丁度家に居た兄と一緒に、
ここまで来てくれるとの事でした。
怪しい人物を見つけたら
すぐとっ捕まえてやるとか、
そんな頼もしい事も言っていました。
だから安心して待っていると、
すぐに2人は脇道から顔を出しました。
……誰かの手のある場所よりも、
少し、先の方から。
そして2人が私の方へ歩いてきました。
狭い道なので、
手の伸びている脇道を通り過ぎる時、
2人の姿で脇道は見えなくなりました。
その見えなくなった数秒の間に、
手も、脇道も、どこかへ消えていて……。
家に帰ってから気が付いたんですけど、
手が出てくる前から、脇道は見えていたんです。
通っていた道よりも、
さらに暗い、曲がり角が。
もしも手が出ていなくて
私があの道を通っていたら。
そうしたら、私、
一体どこへ行っていたんでしょうね。
フーッ
46本目の蝋燭が消えました。
私の姉が、夕方、人気の無い道を
1人で歩いていた時の事だそうです。
後ろから、姉を呼ぶ声が聞こえました。
でも、振り返ってみると誰も居ません。
空耳かなぁと思いながらまた歩き出すと
少しして、また姉の名前が呼ばれました。
でも振り返ると、やっぱり誰も居ない。
姉が進んでも声の大きさは変わらないから
後ろを歩いているはずですよね。
そこは建物も少なくて、
人が隠れられる場所なんてないんです。
名前を呼ばれ続けながらも、
姉は歩き続けました。
時々、振り返りながら。
そしてようやく曲がり角まで出ると
そこで立ち止まり、
相手を待ち伏せしようと決めました。
変わらず姉の名前を呼び続ける誰か。
息を殺し、相手が曲がるのを待ちます。
少しすると追いついた相手の影、
それに続いて相手の姿が見えました。
その声の主は……狸だったそうです。
狸は姉の姿を見ると、
一目散に逃げて行ったそうですよ。
ふっ!
47本目の蝋燭が消えました。