「メアド交換しない?」



…なんなのよ。掴めないじゃないの。



 「いいよー。」



心の中の言葉を留めて、携帯を出した。


約30秒程で、赤外線通信が終わった。



 「さっきは変なこと言ってごめん。忘れていいから。

 じゃ…、俺、家ここだから。

 じゃあな。」



 彼はそう言ってから、二階建ての家の中に入っていった。




優斗と別れて、家までの帰り道、



あたしはぼんやりと、さっきの言葉の意味を考えていた。



"悩みがあるなら聞くよ?"
"俺の愚痴、聞いてくんね?"



…いや。きっと、そんなことじゃないんだと思う。



人の気持ちを読み取るのに長けている彼の事だ。



こんな安易な考えじゃないはず。




…"忘れていいから"、なんて言われても、すぐに忘れられる訳ないじゃん。



眉間にしわを寄せたまま、あたしはゆっくりと家のドアを開けた…。