「…俺な、おかんいないねん。」


 「何で?」



 「小さい頃に離婚してん。…よくある話やけど。

 それで俺はおとんの方に引き取られてん。

 そこで…虐待受けてんねん。

 男のくせにいつも殴られてばっかで、ほんま自分女々しいわ。」


ハハ、と哀しく笑った彼の目には、涙が溜まっていた。


 「そんな経験があってか、人の表情に敏感な性格になってもうたんよ。

 敏感な分、あんま自分から話せへん。

 …あの時唯に、作り笑いのこと話せたのは、

 例外…というか、

 唯なら理解力あるし、俺が言ったことに動じないだろうし、

 気にしないだろうなーって安心しとったからやねん。」


お前…。
かなりそのこと気にしてたぞこの野郎。

あたしは一瞬殺意が芽生えかけ睨んだが、

彼は気にせずに話を続けた。