「…あのさ……抱き締めてくんね…?」
一瞬だけ、言われたことの意味が分からなかった。
お前趣味悪くね!?、と危うく突っ込むところだったわ…。
冗談じゃなくて…本気で優斗は言ってる、…よね?
冗談言うつもりなんだったら、あんなに暗くないはず…。
…抱き締めるのは嫌じゃないよ。嫌じゃないけど…。
…まぁいいや。
こんなに様子がおかしいのに、屁理屈こねてらんねーしな。
あたしは、優斗の隣に座った。
「あたしの膝に座って。」
言われたままに、優斗が動いた。
座った優斗を、あたしは後ろから包み込むようにして、優しく抱き締めた。
「これで…いいの?」
そう尋ねると、彼が小さく頷いた。
優斗、温かい。
香水か分からないけど、程よく甘い匂いが鼻先に感じられた。
…と思っていた瞬間。
滴がぽとりと、太ももに垂れた。
その後も、ぽとりぽとりと、滴が垂れていった。
「優斗…?」
「……俺、もう無理やわ…。」
泣き出す優斗に、正直戸惑いを隠せないあたし。
なんて声をかければいいのか分からない。
どうしよう…。