そう考えていると、チャイムが教室に鳴り響いた。

暫くしてから、教室に先生が入ってきて授業がスタートする。

授業中も、彼はどことなく上の空。

まあ聞かなくても成績は優秀なわけだから、私には関係ないけど。

・・・なんて、ぼけっとしてたら先生に見つかり、

「水野。お前次の問題解いてみろ」

って言われてしまった。

わざわざ黒板の前にまで行かされ、問題を解くはめに・・。

っていうか、解んないし。

黒板の前で固まっていると、さすがに先生も呆れたようで、

「もういい。鴫宮、替わりに解いてやれ」

先生に指名され、だるそうに立ち上がりこちらに来る彼。

うわ~っ、間近で見ると背高っ・・。

私の隣に来て、スラスラと問題を解く。

あっという間に回答してしまった。

「よし、正解だ。席に戻れ」

チョークを持った手を払い、席へと戻ろうとした瞬間、

彼が私に呟いた。


「これくらい解れよ、馬鹿」


何なのよ、何様のつもり!

マジ、ムカつくけど!!

あんな笑顔すら見せない奴に、私は本当に恋してるの?

自分の席へと戻るまでの、ちょっとした通り道に彼の席の隣を通過する。

あんまりムカついたから彼の席を通過する瞬間、彼の席にあった消しゴムを盗んでやった。

これでこの授業中、消しゴムなくて困り果てるがいいわ。

そんな子供染みた事をして満足気になってた私。

席に着いた瞬間、彼がこちらに振り返った。

『どうよ、文句でもあるの?』と言う顔で見返してやった。

すると彼は意外にも睨むわけでもなく、

クスッと小さく私に笑いかけた・・。

そして、すぐさま前を向いてしまった。

拍子抜けしてしまった私。

そして、また胸の中で何かが弾ける音がする・・。

脳裏に彼の顔が焼きついて離れない。

多分この授業中の私は、相当間抜けな顔をしていただろう。