エレベーターの扉が開き、葵衣は拍子抜けしてしまった。
今度はどんな世界が待っているのだろう。
認めたくはないが、そう期待している自分が居た。
…が、目の前に現れたのは、何の へんてつもないオフィスだった。
「…ここは?」
葵衣が訊くと、男はニッコリ笑って言った。
「俺のオフィス!」
「何がアンタのオフィスだって?」
女性の声がして振り返ると、そこには茶色いメガネをかけた美しい女性が立っていた。
スーツ姿がよく似合う。
「…あなたが葵衣さん?」
女性に訊かれ、葵衣は「はい。」と答えた。
「そう、よろしくね。
…あ、そうだ。レモンとライムに会わなかった?」
女性が訊くと、男は思い出したように言った。
「あぁ、会ったよ。…コイツ、レモンにからかわれてた。」
「…あら。ごめんなさいね?
嫌な思いさせちゃって。」
「い、いえ…。」