ロビーは広いが、おかしなことに床一面、草が生えている。


そこには色とりどりの花が咲き乱れ、いくつもの樹さえ生えている。


そこには熟れた果実が実り、今にも落ちてしまいそうだ。


その花や果実の香りなのだろうか。


とても良い匂いがする。


まるで香水のような、それでいて香水らしくない、そんな匂い。


鼻をつくような匂いではなく、とても心地良い匂い。


心をワクワクさせる匂い。


それでいて、安らぐような、そんな不思議な匂い。


そんな匂いに酔いしれていると、葵衣は あることに気付く。


よく目を凝らしてみると、見たことのないものが沢山あるのだ。


ハートの形をした花…なのだろうか、ぷっくりとした、まるで果実のようなものに茎と葉がついている。


しずくの形をした、透明に近い水色の、みずみずしい果実なのだろう、樹に生っている。


葵衣は呆気にとられながらも目をはなすことが出来ず、ずっと よそ見をしていた。