「あっちに行ったぞー!!」
「追えー!!」
本来なら静かであるはずの闇夜も、今夜は騒々しい。
……といっても原因はこの俺にあるのだが。
今回とある文書を探してこのサイオニア城に侵入したのだが、やはり一国の王が住む城とだけあって警備に抜かりがない。
へまをして見つかり、更には左腕に怪我までしてしまった。
いつもはこんな失敗はしないのだが……
とにかく今夜は文書は諦めて、追っ手から逃れることを優先せねば。
屋根づたいに逃げていると、城の裏に面したところに庭のように手入れされたベランダがあるのが見えた。
ここからは人がいるのは見えない。
あのベランダに一度降りて、そこから城の裏に回れば……
一瞬で逃げ道を頭の中に描き上げる。
ベランダに人が居るかはわからないが、ここは一か八かで行くしかない。