仮面で顔付きはわからないけれど、口角が軽く上がっているのは見えた。


「ちょっとしたことだが、リーチェ姫へのお礼になるようなものを見つけてきた」


「そんな……、お気持ちだけで充分ですのに」


「気持ちだけなんて俺の気が済まない」


ルシアン様は私の後ろで控えているアンナに視線を移した。


「姫の外出許可がいただきたいのだが」


アンナは真っ直ぐルシアン様の目を見つめた。


「リーチェ様に危害が及ばないと約束できますか?」


「ああ、もちろん」


何のためらいもなくそう言う。


アンナはしばらく考え込むそぶりを見せると、仕方ないといった様子でうなずいた。


「では、許可を出します。ただし夜が明けると護衛の兵士が部屋に来ますので、それまでにお戻りになることが条件です」


ルシアン様の口元が少し緩んだ。


「心配要らない。危険なことはないと誓うし、夜明けまでには必ず帰す」