思わず見とれていると、男の人は口を開いた。


「すみません。あまりにも起きるのが遅かった為、起こさせて頂きました」


そう言って、右手に持っていたバケツを軽く持ち上げる。



「あ…… だから濡れてるんだ…」



はい、と差し出されたタオルで顔を拭きながら、あたしは再び男の人の顔を見つめる。



すると、男の人はあたしの視線に気づいたらしい。



「申し遅れました。私は、この世界の案内人です」

「案内人? この…世界?」

「気付かれてないのですか? ここは…………」