そして、私が中学2年生に上がってまもなくのことだった。 『―――ただいま…』 誰もいないとわかっていながらも、一応そう言って玄関のドアを開ける。 居間のテーブルには通帳と印鑑、そして一枚の置き手紙があった。 “ごめんなさい” そう書かれた手紙で私は悟った。 …あぁ。 捨てられたんだ。 実の母親に。 唯一の肉親に。 ―――いつの間にか降り始まっていた雨と一緒に、私もどこかへ流れていってしまいたかった。