ドアの開いた先に見える姿に、私は目を見開いた。



「…なんであんたが」




―――そこには息を切らせた松島千尋が立っていた。


開発センターには基本的に研究開発部所属の人間しか入れないことになっている。
だから、ここにコイツがいることはあり得ない。

…はずなのに。






「隅田先輩が入れてくれた。…坪井さんに絡まれたって噂になってたから、心配で」


そう言うと彼は不意にネクタイを緩める。
よく見ると、少し濡れているようだった。