「……正尚は関係ない」
「嘘つくなよ。どーせ脅されたんだろ?」
大地はすぐに見破った。
でもここで本当のことは言ってはいけない。
「別に脅されてなんかない…あたしはもう……大地を好きな人として見れないだけ」
ごめんね、大地。
こんなひどいこと言ってごめんね…。
あたしは、あたしと大地に嘘をつかないともう選択がないんだよ。
「…分かった」
大地の返事を聞いた瞬間、涙が出そうになったのを
後ろで組んでいた腕を指でひねる痛みで絶えた。
「…じゃあ、あたし帰るね」
「…ん」
あたしは自分の部屋の玄関に向かおうと振り返った。
瞬間、大地が後ろからあたしを抱きしめた。
「…大地離して」
本当は違う…。
ずっと離さないで…。
「…麻実」
大地の声は弱々しかった。