「不意をつかれた時だった。ネクタイを捕まれてキスされた」
「…うん。見た」
「一瞬何されてんのか分からなくて頭が真っ白になった」
「…」
「麻実が鞄を落とした音で意識を取り戻した」
「…そうだったんだ」
「あの後、田所を押してお前を追いかけた…でもお前の姿は見当たらなくて…」
「…あの時、トイレに行って泣いてから」
「トイレも探したぞ?」
「学校じゃないよ…近くの公園のトイレ」
「…そうだったんだ」
「…うん」
あの日、公園に行くとトイレに駆け込んで声を出して泣いた。
もう涙なんて枯れてしまえばいいのにと思うのに大地を想う度に涙は溢れた。
大地に裏切られるとは思っていなかったから…
大好きな大地はあたしを想ってくれてるって信じていたから…
信じていた気持ちが裏切られた…。
そんな想いで涙は止まらなかった。