「彼氏の家までは送っていく」




「え…別にいいよ」




「いや、送ってく」




大地は言いだしたら言うことをきかない。



ここは甘えとこうかな…。




「じゃあ、連れてって」




「ん…じゃあ俺、1回家戻るわ」




「了解。用意が終わったらそっち行くね」




「おぅ。じゃあまた後でな」




大地はあたしの頭を優しくポンッと叩くと玄関に向かった。




「だっ、大地」




「ん?何?」




大地は玄関を少し開けたまま振り返った。




「昨日から…ありがとう」




「…ん」




大地は照れ臭そうに短い返事をし、優しく笑って家を出て行った。



ドアの閉まると、あたしはその場に座った。




「…何あの笑顔」




大地が見せた笑顔はとても優しくて一瞬あの頃を思い出してしまった。






だからだ。




だから、こんなに胸がドキドキするんだ…。




あたしは数分立ち上がらないままずっと今さっきの大地の笑顔を思い出していた。