2人は幸せそうに笑ったように見えた。死んでるなんて思えなかった。
しばらくすると父さんが慌てるようにして部屋に入ってきた。多分主治医が連絡をいれたんだろう。
父さんは泣いている僕を見て、龍之介さんと薫子さんのそばに座った。
「…本当に2人とも亡くなっているのか?」
「…うん」
父さんは重い口を開き、涙を流しながら微笑んでいた。
「龍之介さん、よかったですね…。アナタの本当の幸せ、手に入れられんですね…」
本当の幸せ?
僕は父さんが微笑んでいる理由がわからなかった。
父さんは2人に向かって頭を下げると僕に向き直った。