「なにがあったんだ」
有無を聞かない質問。
はぁー…この人には隙がないなー。
完璧なわけじゃないのに。
ものがはっきりとしすぎて、逆に言葉が喉につまる。
「言えないようなことか?」
言えるっちゃ、言える。
お父さんは、元蘭王総長。
こういうとき、だいたいどうするのか、人は違っても意見は似てると思う。
実際、私も気になるから……。
けど、それとは逆に、お父さんを巻き込んでしまいそうだし、もう一切関わることを許してくれなさそう。
頭の中で、どっちがいいのか、それだけが駆け回る。
「真麻…」
お父さんは心配してくれてるんだよね。
ずっと黙る私を、なんとか助けようとしてくれてるんだよね。
……そのとき、
「……ん…」
雷斗が起きた。
タイミングって怖いなー。
「お前……、大丈夫なのか?」
お父さんは私の腕を離し、雷斗の方へ寄る。
「……ここ…」
「俺ん家だ」
雷斗は驚いた顔をして、すぐに時計を見た。
「じ、時間……」
「あぁ、気にすんな」
「すす、すみません!」
いきなり立ち上がり、約90度、腰を曲げて謝る雷斗を見て、お父さんは一瞬目を大きく開いた。
もちろん、私も。