電気がついてないこの部屋は、窓から入ってくる月の光と、ネオンの光だけに照らされる。

もう、涙はでない。

いや、でてこない。

だって、涙を流す資格が……私にはないから。

そう、微塵もない。

雷斗は、だいぶ落ち着いてきたのか、息が規則的になってきた。

ふさふさした綺麗でサラサラな髪の毛をさわる。

一切絡んでなくて、えだ毛なんて見つからない。

「へくしゅっ…!」

部屋の中でも、冬の寒さは肌を通して伝わってくる。

くしゃみが出るのは、寒さの所為。

「……んっ…」

「雷斗?!」

目が覚めた……?!

…と思いきや、ただの寝返りだった。

「ハァァー…」

深いため息をつく。

それと同時に携帯が鳴った。

♪〜♪〜

「はーい」

『真麻?』

「……翔?」

『あたりー』

相手は翔。

「あらー、夜電話じゃなかったのー?」

棒読みで言うと、鼻で笑う声が聞こえた。

『もう夜だよ』

「悪者にとっては夕方なんじゃない?」

『俺は紳士なんでね』

アハハと笑う翔は、どこか無理しているように思えた。

「冗談もほどほどに…!……で、話って?」

『あぁ、実は……』

――迷惑ばっかりかける私が、大嫌い。

――ねぇ、もう見てるだけでもイタいよ……。