エレベーターの中。

苦しそうに息をする雷斗を横目で見ながら、18階のボタンを押す。

不安だなぁ……。

こんな体調の悪いところ、初めて見た…。

「大丈夫?」

聞いても返事は返ってこない。

荒い息だけ。

「異常だな。最近無理してたからかな、コイツ」

苦笑いしながら言うお父さん。

「無理してた…?」

「あぁ、お前のために必死こいてたよ」

う、そ……。

知らなかった。

本当、申し訳ないよ。

「雷斗…」

小さい声で呟いたはずなのに、エレベーターの中じゃ響く。

「お前等、別れそうにないな」

当たり前だよ。

こんなイイ彼氏、そうそういないでしょ?

って、完璧ノロケはいってんじゃん!

「私が別れる気ないからね」

自然にできた満面の笑顔で言うと、

「若いっていいな」

悲しそうに笑いながら言われた。

「あっ…」

ふれたくなかった。

それと同時にチンッとエレベーターが開いた。

タイミング、よすぎ……。

先に、お父さんが雷斗を担いで出る。

「気にしてねぇよ」

と、振り返らずに言った。

その声があまりにも切なげだったから、私は声を出すことができなかった。

少し遅れてエレベーターを出た。