「寒いね〜っ」

「さっびー」

さりげなく、私の手を繋げたまま、自分のポケットの中に入れるのを見ると、つい頬がゆるむ。

「えへへっ」

あぁ、私ってブリッ子なのか?

違うよね…!

嬉しい気持ちを隠せないときって、誰でもあるよね!

なのに、コイツは彼女様に向かって――、

「柄にもねえ声だすな」

と笑いながら言ってきた。

コイツ――ッ。

私のドキドキ返せコラアアアア!

「つうか、ちゃんと案内しろよ」

気だるそうに歩きだした。

……っ!

その姿が、すごく胸にささった。

「……っ…だったら翔に頼めばよかったじゃん」

そんな顔するなら…。

逢いたいって思ってたのは私だけか……。

私だけだったんだ……。

「んだよソレ」

雷斗まで腹をたてている。

一番腹立つのは私だよ!

「だからー!わざわざ雷斗じゃなくても翔に送ってもらってもいいって言ってんの!」

私も素直じゃないけどね。

2人の空気が一気に重くなる。

「ばか……」

呟いた声も、スッキリするどころか、逆に胸が苦しくなるだけ。

本当は嬉しいのに……。

息があがるまで本気で走ってきてくれたことが、嬉しかったのに……。

だから凄く傷ついた……。