「側にいるだけでは知識を得た事にはならんよ。身につける意識が無ければね」

 それは、落ち着いて静かだが厳しく言い放たれた。

「──っそんな、ことは」

 否定したかった。

 けれど、それが出来るほどに自分は何かを得てきただろうか。

 解らない、無理だとオヤジに任せきりだったんじゃないだろうか。

 覚えようとしたことが少しでもあったんだろうか。

 押し黙ったライカを見つめていると、バックポケットの端末が着信を振動で伝えた。

「ベリルだ──そうか。詳細はメールで頼む」

「どうした?」

 車に向かうベリルに尋ねる。

「元を叩かんとな」

 何かを含んだ言葉にライカは小首をかしげた。