「繭また剣道部に行くの?」

「え?えぇ、頼まれたので」

「その敬語やめなよ」

「ハハハ」

彼女は高井美音、中学からの親友。

「でも残念、今日は部活があるから」

「頑張ってね」

「うん」

彼女は茶道部の部長を務めている。

「帰りは?」

「部室まで行くよ」

「分かった。待ってる」

「じゃ」

「バイバーイ」

今から剣道部に、行きます。

ガララッ

「キャア」

「そんな驚かなくても・・・」

「び、吃驚して」

ココは更衣室。

「華道部、今日は着物練習なのね」

「えぇ。大会が近いので」

「頑張って」

そう言って私は更衣室を出た。勿論剣道部の服に着替えて。 




ガララッ(再び)

「お、今日も来たのか」

「はい。手合わせ願います」

「おう、良いぞ」―――・・・

「次!」

さっき部長を倒しました。

「キャー」

書道部は今日はお休みらしい。
「じゃ次は俺が」

「どうぞ」

「始め!」

「ハァアアアッ」

「フッ」

真正面から来るなんて。

私は難無く避ける。

「ハッ」

相手が体勢を立て直す前に、私は剣を振り降ろした――・・・

「一本!」

「キャーーー」

「嘘、だろ」

「?」

女の子は悲鳴を上げて喜んでいたが、剣道部の人たちは、唖然している。

「何かしましたか?私」

頭に被っているのを外して聞いてみた。

「否、まさか西森が負けるなんて思ってなかったから」

西森・・・あっ!

「あの剣道のありとあらゆる賞を総なめにした!?」

「あぁ」

「あ、えと」

「あーあ、甘く見すぎた」

「西、森」

「すんません。女だって甘く見てました」
そう言って面を外した。わ、カッコいい。
「おい女」

「はい」(おい女って酷くない)

「お前名前は?」

「葉月繭です」

「繭。お前見かけによらず、体力アンだな」

「どうも」 
 
【あんな事】あったからね。体力は、男子にもかつよ。

「俺・・・」
 
「はい!?」

この人は、私の顎をクイッと掴み。

な、何するの~~~!!!???
「繭の事気に入った」

「はい?」

ど、どういうこと?

「繭は俺のお・も・ちゃ」

「はい!?」

人をオモチャ扱いって・・・酷くないですか?

「あの~」

「ん?」

満面笑顔ですね・・・

っじゃ無くて!男の人は信じちゃ駄目!!
 
あんな事が・・・

あ、ヤバ、フラシュバック・・・

私は【あの事】を思い出してしまって、剣道場に座り込んでしまった。

「おい、繭?大丈夫か?」

西森君が私の頬に触れようとした時・・・

「繭に触らないで!!!!!」

親友、美音が叫んだ。

そして剣道場に走ってきて。

私を抱きしめた。

「み、おん」 

「大丈夫だよ。私が居るから、ね?」

美音は【あの事】を知っている。

実は家が近いのを知って、両親が【あの事】を話した。

美音は優しいから、『過呼吸になったら私が助けます』って泣きはらした目で、
でもとても強い目でそう言った。

そう、私は【あの事】を思い出したら過呼吸になる。

「あ、り、がと。美音」
 
「ん」

「悪かったな」 

「西森君は悪くないです」

「ふーん。俺悪くねぇんだ」 

「へ?」
 
「じゃ、オモチャ決定な」

「はい!?」

「玩具?」

「俺の暇つぶしの相手」 

「「はい!?」」

「繭をそんな風に思ってる人に繭はあげません!!」

「み、おん?」

何言ってんのこの子。

「それに私生徒会で忙しいですし、相手出来ませんよ」

「大丈夫、明日になれば分かるから」

「「??」」
次の日

♪キーンコーン・・・

「繭行こっ」

「う、うん」

「そんな気にしなくても」

「そうね・・・」

そう、あらからお昼まで1度も西森君は現れなかった。

「何となく言っただけかもしれないし」

「そうね」

ガララ・・・

「会長~」

「あぁ。葉月さん」

「私も居るんだけど」

「知ってるよ。毎日来るからね」

ココは生徒会室。生徒会はココで昼食をとる決まりのになっている。

「あ、来た来た」

だ、誰!?
「繭~」

「に、西森君!?」

「何でココに居るんですか?」

「会長に頼んで一緒に来たの」

「十夜が勝手に来たんだろ」

「まあね~」

「会長?お知り合いなんですか?」

「あぁ。同じクラスだし」

「ってか、家隣の幼馴染だし」

「そうなんですか」

何か良いなーそういうの。

「「///////」」

「会長?西森君?顔赤いですよ?」

「繭ってば可愛すぎ!」

そう言って美音は抱きついてきた。
「分かったから、お昼食べるよ」

「はーい」

やっと食べれる。

「葉月さん。明日のなんだけど」

「あ、最後の言えば良いんですよね」

「うん」

「解りました」

「でも、明日のってゆ」

「美音」

「っ・・・はー」

【あの事】は美音しか知らない。

「どうかした?繭」

「いいえ、何でも有りません」

「なら、良かった」

それから幾つか明日の話をして、4人は解散した。

大丈夫、明日の集会が、最近高校生を巻き込んだ事件が多いからっていうのだけど。

映像や話を聞かなきゃいいだけ。


私はまだ知らなかった。

明日私が見てしまうのを。

思い出してしまうのを・・・
「え~っと」

今日の6時間目は高校生が被害に逢い易いものを取り上げた集会。

「では次に、誘拐のVTRを見て下さい」

え・・・

「そこの生徒!ちゃんと見なさい!」

下を向いていた私は寝ているのと勘違いされ指摘された

クイッと顔を上げるとスクリーンには女の子が車に乗せられるシーンが・・・

また・・・最近多いな・・・

そう他人事みたいに思っていた私は、瞬間。

意識を手放していた―――・・・