子供の頃から“お姉ちゃん”が欲しかった……。

理由は至って単純だった。

姉がいれば年上の女と自然に知り合えると思っていたからだ。

小さい頃から年上の女が好きだった。

だけど残念な事にうちは三人兄弟で、全員男だった。

僕は次男の健二。

三コ上の兄貴は健一……こいつがもし女だったらどんなによかったか……。

僕はずっとそう思っていた。

そして三コ下の弟の健三。

こいつは昔からかわいい奴だと思っていた……。

僕達三兄弟は親が手を抜いたとしか思えないような名前を背負って、三人仲良く生きてきた。

だけど、僕が高校に入学した頃、兄の健一が大学進学を境に一人暮らしを始めた事で僕ら兄弟はバラバラになっていった。



僕は今都内のアパートで一人暮らしをしている。

大学進学を境に兄を真似して僕も一人暮らしをすると宣言し、実家を出たものの、すぐに家賃と光熱費が払えなくなり、仕方なく兄貴のアパートに転がり込んで居候になった。

身勝手な僕を兄貴は「ほんとにしょうがない奴だな」と言いながらも受け入れてくれた。

もし兄貴に拒否られれば僕は実家に戻るしかなかった。

この時は本当に兄貴に感謝したものだった……。

それからしばらくして兄貴は何日も部屋に帰ってこない事が続いた。

初めは「まぁ色々付き合いもあるしな……」と思い、軽く考えていた。

しかし、次第に兄貴が部屋に帰ってくる回数が減り、兄貴は何週間も外泊するようになった。

やっぱり僕が邪魔なのかと思い、一度兄貴に聞いてみようとしていた矢先、兄貴は「しばらく帰らないけど心配するな」という置き手紙を残し、そのまま失踪してしまった。

こうして僕の一人暮らしが始まった。

アパートには帰ってこなかったが、毎月の家賃と光熱費は兄貴が僕の口座に振り込んでおいてくれたので何とかやってこれた。

そんな兄貴が僕の前に姿を現したのは一年後の事だった……。


【続く】