まだ間に合う。言葉を変えよう。今、この場に最も相応しい言葉。
「おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、傷の手当てをしてくれてありがとう。綺麗な着物をありがとう。ずっとずっと大切にするね」
娘として、孫として語りかけた言葉に何人かの者が別れを感じ始めたのだろう、涙を流し始めた。
「巫女様、はよう逃げなされ。ここに居てはあんたまで連れてかれてしまう」
「そうじゃ、そうじゃ!わしらもう娘を連れてかれるのは嫌じゃ!」
また血豆をつくり耕した農地を荒らされるかもしれない。
また家族のように育てた家畜を食いつくされるかもしれない。
また家を荒らされ金品を強奪されるかもしれない。
雪解けとは、民たちに過酷な悲劇を告げる足音だ。
それでも。
それでも。
それ以上に。
自分たちの身より、娘である巫女の命なのだ。
その優しさと愛を一身に受け、巫女はもう一度青白く輝く月を見上げる。
・・・ああ八百万の神々よ。
その瞳の輝きは凛と。
・・・心美しき民と花咲く土地を守りたまえ。
揺るがぬ決意を胸に秘め。
・・・依り代に、この身を捧げましょう。
月明かりに照らされる巫女は、まさに神のその姿だった。
「神不在のこの土地に、神を呼びましょう」
月明かりに照らされて、巫女はそう言った。
「おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、傷の手当てをしてくれてありがとう。綺麗な着物をありがとう。ずっとずっと大切にするね」
娘として、孫として語りかけた言葉に何人かの者が別れを感じ始めたのだろう、涙を流し始めた。
「巫女様、はよう逃げなされ。ここに居てはあんたまで連れてかれてしまう」
「そうじゃ、そうじゃ!わしらもう娘を連れてかれるのは嫌じゃ!」
また血豆をつくり耕した農地を荒らされるかもしれない。
また家族のように育てた家畜を食いつくされるかもしれない。
また家を荒らされ金品を強奪されるかもしれない。
雪解けとは、民たちに過酷な悲劇を告げる足音だ。
それでも。
それでも。
それ以上に。
自分たちの身より、娘である巫女の命なのだ。
その優しさと愛を一身に受け、巫女はもう一度青白く輝く月を見上げる。
・・・ああ八百万の神々よ。
その瞳の輝きは凛と。
・・・心美しき民と花咲く土地を守りたまえ。
揺るがぬ決意を胸に秘め。
・・・依り代に、この身を捧げましょう。
月明かりに照らされる巫女は、まさに神のその姿だった。
「神不在のこの土地に、神を呼びましょう」
月明かりに照らされて、巫女はそう言った。