そんな俺に、紺もまた驚いた表情を見せる。

「え、聞いてない?こないだのデートとかで聞いてるもんだと思った」
「だから何だよ」
「別に大した話じゃないよ。俺のバイト先のサロンの、カットモデル頼んだんだよ。頼んだってか、ほんとは亜紀ちゃんにお願いしたんだけど、亜紀ちゃんが髪型変えたくないから、やっぱり芹梨ちゃんに変わって欲しいって頼んだみたいで」

「それ、その時の写真」、紺はあっさりそう言って、次がゼミだからと講義室を出ていった。

紺の背中を見送った後、俺はその封筒に視線を落とす。

『カットモデル頼んだんだよ』

…聞いてない。

いや、別に聞いてないことがどうというわけじゃない。
紺の態度からしても、特に大きな出来事ではないのかもしれない。

でも、何だろう。
この心にもやがかかった感じ。

俺はその写真をそっと取り出した。