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芹梨とのデートは、俺の中では大成功だったと思う。

結局あの後芹梨と沢山話して、知らない手話を沢山教えてもらい、夜は俺の行き付けのダイニングバーに行った。

そこでも芹梨は満足してくれて、帰りまで笑顔を絶やさなかった。

俺は、確実に芹梨との距離が縮まったと思っていた。

そう、思い上がりをしていたんだ。


「遥」

週に1コマしかない講義の終わりに、紺に話しかけられた。

俺は丁度鞄を持ったところだったので、「おぅ」と立ち上がる。

「紺もいたんだ」
「いや、寝坊したから受けなかった」
「出席取らないからな。ノートは見せねぇぞ」

「わかってるよ」と笑い、紺は自分の鞄から封筒をひとつ取り出した。

「これ、芹梨ちゃんに遥から渡しといてよ」

白い少し厚みのある封筒。
俺は手にして、「何?」と聞く。

「こないだの撮影のポラ。ありがとうって伝えといて」

「俺、今度の飲み会行けないかもしれないからさ」、そう言う紺の言葉を、俺は今一理解していない。

眉間にしわを寄せて、俺は紺に聞いた。

「撮影って、何?」