『よく食べるよ。ただ、太りやすいんだよね、あたし』
芹梨が言った事は、その華奢な体からは到底想像出来ない言葉だった。
『人より太りやすいから、食べ物とかは気をつけてるの』
『これでもね』、そう言っていたずらそうに笑い、サラダを食べ始める。
芹梨は、どこにいても視線を集めるくらい綺麗だ。
おしゃれな服も、綺麗な髪も、爪の先までしっかり気を使っている。
言うなれば完璧に近いその容姿は、決して生まれながらの素質だけではないのだろう。
そういうの、いいよな。
言いたかったけど、どこか気恥ずかしくて、敢えて口にはしなかった。
また芹梨の一面に近付けた気がする。
そんな事を思いながら、目の前の芹梨との距離が、ちょっとずつ近付いているのを感じていた。
一歩ずつでも、順調に。
確かに俺達の距離は近付いていると、その時の俺は、確かにそう思っていた。