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芹梨が向かった先は路面店。
芹梨の雰囲気に合ってるセレクトショップだった。
「よく来るの?」
『うん。大抵ここで買う』
そう言って芹梨は楽しそうに服を物色し始めた。
「あ、芹梨ちゃん!いらっしゃい」
そんな芹梨に、お店の店員さんが話しかけてきた。
すらっと高い背の女性。膝丈のワンピースがよく似合っている。
芹梨は彼女を見つけて益々笑顔になり、ぺこりとお辞儀をした。
「何々、今日はデート?ゆっくり見ていってね」
それだけ言って、フィッティングルームに向かう。
俺が驚いたのは『デート』という単語ではなく、彼女が手話を操っていたことだ。
そんな俺に気付いてか、芹梨は笑顔で言った。
『山内さん。ここのスタッフさんで、手話できるの。いつもよくしてもらってるから、ここに来る事が多いんだ』
「へぇ」、そう言いながら、案外手話ができる人は少なくない事を知った。
同時に、どこか負けてられないという気持ちにもなる。