……………

今日の待ち合わせは街のファッションビルの前。
例に違わず10分前には着きそうだ。

気合い入れてワックスをつけすぎた髪をくしゃっと触り、緊張を抑える。

芹梨と二人きりで話す事はあった。
でも、二人きりで出かけるのは初めてだ。

緊張を抑えるために軽く深呼吸して、待ち合わせ場所に向かう。

早く着きすぎただろうな、そう思ってビルの前をくるりと見渡す。

その姿が視界に入った瞬間、心臓が急速に速まるのがわかった。

ドルマンスリーブになっている白シャツ。ワイドタイプのそれは、華奢な彼女を引き立たせている。
カーキのカーゴパンツは裾がおり上げられていて、その細い足首が露になっていた。
足元のサボと同系色のショルダーバッグ。チェーンの部分が、彼女が視線を動かす度に揺れる。

いつもの芹梨とはまた少し違う雰囲気。
でもそれも着こなしてしまうから、さすがだ。

心臓のペースが速くなったのは、そんな芹梨を見たからだけではない。

俺より早く待ち合わせ場所にいた芹梨。
それが、何より嬉しかった。