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「ありがとうございました」
エレベーターを降りて、ビルの外に出る。
すっかり春が訪れた街は、新しい環境に飛び出した人達で溢れていた。
俺もその内の一人。と言いたいところだが、浮かない表情の俺は、周りのフレッシュさとは少し違う気がした。
慣れないスーツのネクタイを緩め、いつものスタバに向かう。
奥の席には、足を組んで雑誌を読んでいる紺がいた。
「疲れた」
「お、終わった?」
ドサッとソファーに荷物を起き、そのままソファーに吸い込まれた。
「おー、社会人みたい」
「まだ大学生だっつの。スーツやっぱ違和感だわ」
「今日はスーツだったんだね」
「まぁな。一応、OB訪問だし」
コネを使いまくって内定をもらった会社。今日はそのOB訪問の日だった。
と言っても知ってる先輩が多い会社だから、少し雑談をして終わった様な簡単なものだったけど。
「紺は…サロンだっけ」
「うん。最初はアシスタントで、いつかはスタジオとかに入れてもらうつもり」
「もう行ってんの?」
「うん、バイトでね」
そう言って飲んでいたコーヒーを飲み干した。