観覧車が傾き始めた頃、佐奈ちゃんが意味深な笑顔で聞いてきた。
「まぁ…見たまんまだよな」
「伊織も圭吾君だよ」
「え?」、俺が一瞬驚いた視線を佐奈ちゃんに向けると、彼女はちょっと笑って、「だってあのくじ、圭吾君と伊織がペアになる様になってたもん」と言った。
まじか。全然気付かなかった。
「へぇ」と呟く俺に、佐奈ちゃんはまた驚く様な事を言ってくる。
「遥君は、残念だったね。芹梨と一緒じゃなくて」
いきなり向いた矛先に驚いて目を丸くする。
そんな俺を見て、佐奈ちゃんは面白そうに目を細めて笑った。
「やっぱ、芹梨だ」
「は…何、急に」
「別に隠さなくていいよ。まぁ遥君はファッションショーの時から芹梨しか見えてなかったもんね」
そう言われると、二の句が次げない。
俺はばつが悪くなり、首筋をかいてゴンドラの外を眺めた。
「なぁ…、聞いていい?」
だいぶ頂上付近に近付いている。
佐奈ちゃんが「何?」と聞き返した。
「芹梨のって…生まれつき?」
それだけで多分、意味は伝わったはずだ。