やべ、ちょっと引かれた?
たまに、ないことはないんだ。
女物のブランドに詳しかったり、服に反応しすぎたりすると、特異な目でみられること。
こういう話はしない方がよかったかな…そう少し後悔し始めていたところに、芹梨が思ってもなかった反応をした。
『そういうの、いいね』
その手話を見ながら、意味を履き違えてないか考える。
驚いている俺に、芹梨は優しい笑顔で続けた。
『自分の好きなこと、素直に言えるってすごいいいなって思う』
そう真っ直ぐ伝える芹梨に、徐々に体の奥から暖かいものが込み上げてくるのがわかる。
…すごいいいなって思う。
芹梨のその言葉が真っ直ぐに俺に向かってる都合のいい錯覚に囚われて、俺は冷静になる為に帽子をかぶり直した。
「いや、うん…ありがと」
なんつー照れ具合だよ。
自分の照れ具合に益々恥ずかしくなったが、芹梨はそんな事気にもせず、手話を続けた。
『素直で、嘘がないんだなぁって思う。ファッションショーの時も、よく考えたら真っ直ぐにあたしに向かってきてくれてたなって。だから…あの言葉、凄く嬉しかった』