『まだ、みんな来てないんだね』
「多分、もうすぐ来るよ」
『すごい。手話、すごい出来る様になってる』
俺が手話で会話を返す事に、芹梨は驚いている様だ。
ここ数週間、暇さえあれば手話の勉強をしていた。
買っておいた二冊の手話の本はほぼ覚えたし、実際に手話を見たいがために、TSUTAYAで手話関連のドラマや映画を片っ端から借りて見た。
それによって、かなり手話の流れや使い方、よく使う手話なんかもわかる様になっていた。
だからこそ俺は、まるで小学生がお母さんに誉められた時の様に、少しだけ照れて笑った。
「勉強したんだ。覚えれば覚える程、何か楽しい」
そう言うと、芹梨は『そっか』と微笑んだ。
次の瞬間、何かに気付いた様に目を丸くして、がさがさと鞄から携帯を取り出す。
そして、それを掲げて『ごめん』と言った。
「え?」
俺が聞き返すと、手話をしかけていた芹梨は、その携帯を開いた。
何やらカチカチとメールをしていると思っていたが、次の瞬間、俺のポケットの携帯が揺れる。
戸惑いながらそれを取り出すと、新着メールが一件。
それは、俺が昨日から待ち望んでいたメール。