「は?」
俺が驚いて圭吾の顔を見ると、いやらしくにやついた笑顔で俺を見つめていた。
「お前、何で芹梨…」
「いやー、一目瞭然でしょ。暗黙の了解で、芹梨ちゃんには手出しちゃだめなんだーってわかってたし?」
「は?だから何で…」
「遥の矢印、ちょー見えてましたから」
そう言うと圭吾はチケットを持って立ち上がって、「日曜日、あけとけよ~」とスキップで立ち去った。
そんなウキウキの圭吾を見ながら、俺はアホみたいに口をあけて、「まじかよ」と呟く。
…俺、そんなわかりやすかった?
だったら、芹梨にも…。
いや、困る。
そういう意識のされ方は非常に困る。
だって多分芹梨にとって俺は、あのファッションショーのせいでマイナスの位置からスタートしてる。
あの合コンで、二人きりで話せたからと言って、まだそういう意識を持たれる段階ではないはずだ。
変に意識されたせいで、もう会えないとかなったら…。
そう思った自分に気付き、俺は軽く嘲笑した。
今までの俺だったら、そんなの関係なく押していたはずだ。
向こうにまだそういう気がなくても、そういう気にさせる自信みたいなものがあった。