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階段を登る音が聞こえたが、俺は敢えて気付かないふりをしてそのまま横たわっていた。
かん、かん、と、鉄筋の錆びた音が響く。
その音が途切れたと同時に、ひんやりとした缶が頬に当たった。
「コーヒー、120円ね」
「…頼んでねぇよ」
こんっと顔の横に置かれた缶コーヒーは、俺がいつも飲んでいるもの。
いつも授業をさぼる時はこの図書館裏の非常階段で、それを熟知しているのも、俺の缶コーヒーの種類を知っているのも、恐らくこいつだけだ。
「何だよ、紺」
俺はむくっと起きあがり、缶コーヒーに手を伸ばした。
紺は手すりにすがって、自分のミルクティーを開けていた。