「…結局」
気まずい雰囲気が流れる中、口を開いたのはやっぱり圭吾だった。
「何だよ」
「結局お前は、いじけてるだけじゃねーかよ。芹梨ちゃんの活躍見て、自分とは違う世界だとか何とか言って、結局は自信ねぇだけなんだろ?芹梨ちゃんの才能に嫉妬してるだけじゃんかよ」
「…は、お前、もっかい言ってみろよ」
がたんと椅子の動く音がして、気付いたら立ち上がった圭吾の胸ぐらを掴んでいた。
「おい、落ち付けって」と仲裁に入った真二は視界にも入っていなかった。
「認めろよ。自分の未熟さに目を向けるのが怖いだけなんだって。芹梨ちゃんのせいにすんじゃねぇよ」
「お前は見てないから言えんだよ!芹梨のあの世界を見てないからそんな事簡単に言えんだよ!あんな世界、簡単には作れねぇ。あんな世界見せられたら、簡単に芹梨にこっちに来いなんて言えねぇよ!」
完璧な、芹梨の世界。
あの真っ白な創造の中に、俺の陳腐な色を落とす勇気が、なかった。
汚す勇気が、なかった。