「新しいデザイン画、描いてるの?」
怜奈が俺の機嫌を伺う様に聞いてきた。
男だけで話していたらいつか取っ組み合いが始まりそうな雰囲気だったからだろう。
「いや…」
俺は煙と同時に呟いて、携帯灰皿に残りの煙草を潰した。
「描けない」
「描けないってお前…」
「芹梨モデルじゃ、描けない」
圭吾の言葉を遮った俺の告白に、その場の全員が固まるのがわかった。
しばらく全員黙っていたが、圭吾がため息と同時に口を開く。
「何があったんだよ、芹梨ちゃんと」
「何もねぇよ」
「何かあったからそんな事言い出すんだろうが。お前、それでもプロ意識あんのかよ。モデルに手つけたのはお前だろ?今更お前の感情一つでこっちを振り回すな…」
「プロじゃねえだろ」
少し語尾が荒くなっていたことは、口に出してから気付いた。
でもかまうことなく、続ける。