……………
「どうすんだよ、遥」
珍しく苛ついた圭吾の声が教室に響いていた。
俺はなるべく冷静を装って、煙草に火をつける。
「遥、ここ禁煙」
「関係ねぇよ」
紺の忠告を遮り、俺はふうっと白い息を吐き出す。
冷静を装っていた。
冷静になろうと、努めて振る舞っていたんだ。
…事は二時間前に遡る。
そろそろドレスの作成に取りかからなきゃなと言った真二の一言から始まった。
真二の言うことは最もだ。12月も目前に控えた今、2月のショーに合わせて本腰を入れ始めるのは決して早すぎではない。
特にうちのグループは早々にモデルも決まり、俺も何体かデザインを描いていたから、みんな少し安心していたのもあったのだけれど。
そのデザイン画は全て、俺のこの手で引き裂いてしまったわけで。
その事を告げると、全員顔を真っ白にして、授業もそっちのけで空いている教室で緊急会議が始まった。