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「遥さん、これやっぱ赤系でいきます?」
「あー、いや、そのままがいいわ」

後輩の子が持ってきた布を確認し、前のオレンジの布を指示する。

「ショー8月末だろ?赤だとちょっと暑苦しい。もっと深い赤あんの?」
「や、これだけっす」
「じゃあ前のオレンジで」

ショーの時期も考えて、イメージを作る。それが今回の後輩達のショーのテーマでもある。

夏休みにも関わらずこうして学校に出ているのは、そんな後輩の手助けをする為だ。勿論そんな義務はない。ただ、こいつらはショーも目の前なのにまだ布の裁断すらしていない。

「助けなきゃ終わんねぇよこれ」

ミシン室で一通り作業を終えた俺は、ぐっと伸びをして悪態をついた。

「可愛い後輩の為だろ。俺達も去年こんなだったじゃん」

紺も珍しくミシンを回しながら言う。
元々メイク専攻だから、ミシンを使うことがあまりないのだ。

「まぁ確かに」

そう呟いて、紺を見習い最後の一仕事に取り組む。