目を細めて海を眺めるその横顔。

太陽に晒すのが勿体ないくらい白く透き通った肌。
海風が靡かせる後れ毛が俺の心をくすぐった。


俺の視線に気付いたのか、芹梨はこっちを向いて『何?』と言って見せる。

「いや…」

俺は見ていた事を気付かれた事にちょっと戸惑ったが、素直に言った。

「芹梨…目立つから。あんま…海とか、そういうとこで一人になんなよ」

事実、芹梨を見ていたのは俺だけじゃない。

抜群のスタイルに可愛らしい顔、海に一人でいるには勿体ないことこの上ないし、無防備な事もこの上ない。

他の奴に見られたくない…なんて、独占欲丸出しな台詞は言えなかったけど。

そんな健全とは言えない考えを繰り広げていた俺の隣で、不意に芹梨の笑顔が消え、うつむくのがわかった。

俺は芹梨の方を向いて、『どうした?』と手話をして見せる。

少し視線をうつむかせたまま、彼女はゆっくりと、手話で話した。


『…ごめんね、遥君』


あまりにも予想外で、尚且つ会話の繋がりがわからなかった俺は、きょとんとした表情で「何が?」と聞く。

芹梨はそのまま、またもや俺が想像もしていなかった言葉を続けた。