……………

ネオンで明るい繁華街を、俺は走った。

沢山の人で溢れている狭い道。
必死で視線を動かし、線の細い背中を探す。


…多分俺は、一番言ってはいけない事を彼女に言ってしまった。

誰だって人をわかりきる事なんか出来ない。
そんなの俺達は当たり前の様にわかっているのに、多分芹梨は、自分で背負い込んだ。


自分の耳が聞こえないから。

自分が話せないから。

だから、わかり合えないんだって。


彼女のあの手話は、傷付いたサインだった。


芹梨がどう感じるかなんて、わかってたはずなのに。

俺は、自分の未熟さを思い知らされて、それを誤魔化す為に彼女を傷付けたんだ。


「…最低だろ」


とにかく今、芹梨を見つけたい。

見つけて、謝りたい。


飾りの言葉なんか何もいらない。

ただ真っ直ぐ、芹梨の目を見て。


メイン通りの外れ、少し奥ばった道に足を向ける。
ここを抜けたら、川沿いの道に出る。

人通りが少し少なくなったからか、俺はその道に入ってすぐに、その背中を見つける事ができた。