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無機質な着信音が嫌になるくらい耳の奥に響く。
何コール目かでお得意の留守番電話に繋がり、思い切り舌打ちをして通話を切った。
「くっそ、まじあいつ出ねー」
苛立ちを抑えるために煙草を加えたが、ライターに火がつかず苛立ちを増長させるだけだった。
「間に合うのかよ」
「間に合わせなきゃいけねーだろ」
紺がメイク道具を遊ばせながら、ため息をつく。こいつは焦っているのか冷静なのか全く判断がつかない。
「他の子もう完成してるよ。もうすぐ先輩来るんじゃない?」
「わかってるって!繋がんねーんだからしょうがないだろ!」
苛立ちを紺にぶつけてもしょうがない。と、その瞬間、丸椅子に置いた携帯が震えた。
どんな神業か、俺は瞬時に通話ボタンを押す。
「あかりか!?お前今どこだよ!?」
「ごめーん、さっき起きてぇ、昨日飲み会だったから」
気だるい寝起きの声とテンポが今の現状とかけ離れすぎていて、俺の焦りを増長させた。
「そんなん知らねーよっ!お前、ショーまであと30分しかねーんだぞ!?間に合うのかよ!?」