歌手になる日を夢見ていた…人間だった日々。

そして、堕天使だと思い出してからの自分。

(もっと…歌いたかった…。レクイエムではなく…)

レダは、目を開いた。

歌いながらも、泣きじゃくる赤星浩一の姿が映った。

(フッ)

そして、微笑みながら、レダは消滅した。





「ま、また…僕は…救えなかった」

消滅したレダを見て、空中で崩れ落ちそうになる僕の耳に、楽しそうな高笑いが飛び込んできた。

「!?」

驚き、慌てて振り返ると、空母に穴が空き、海へ沈んでいくのが見えた。

「な!」

絶句しながらも、助けに行こうとする僕の前に、新たな天使が立ちふさがった。

「お初にお目にかかります。赤の王よ。我が名は、ジャスティス!」

深々と頭を下げるジャスティスの横をすり抜けると、僕は空母に向かって降下した。

「おやおや」

ジャスティスは頭を上げると、肩をすくめた。

「もう誰もいないのに」

そして、にやりと笑った。


「!?」

僕は降下した瞬間、空母は爆発し…その中から、光の球が飛び出してきた。

「天使の降臨です」

ジャスティスは腕を組み、楽しそうに見下ろした。


「な!」

僕の目の前で、皮を剥くかのように光球の表面が裂け、白い翼になった。

そして、その中から、裸の天使が現れた。

その姿を見た瞬間、僕はキレた。

先程、僕を頼ってきた人々の顔が浮かんだ。

「うおおおっ!」

咆哮を上げると、瞳が真っ赤になり、僕の手に炎の剣がつくられた。

「…」

降臨したばかりの天使は、僕の接近に気付き、顔を上げた。

「哀れな子羊よ。神に背く罪を知りなさい」

天使は手のひらを、僕に向けた。

そこから感じられる力は、レダを凌駕していた。

「やれやれ〜折角、お会いできたのに…お別れとは」

ジャスティスは上空で、十字を切った。

「残念です」

しかし、十字を切った手が止まった。

「何!?」

突然、顔を強張らせると、生まれたばかりの天使に叫んだ。

「に、逃げろ!」