「さあな」

光輝く翼を持った僕を見て、レダは取り乱す。

「上位の存在であるバンパイアも、人や魔物から命を搾取するもの!そんな汚れた存在が、光の訳がないわ!」

「だったら!」

僕は、手のひらをレダに向け、

「人を滅ぼそうとするお前達は!光だというのか!」

睨み付けた。

「それは、神の裁き!粛清!聖なる行いよ!」

「言葉だけ飾り付けても、やることは殺戮だ!」

「!?」

僕の叫びに、魔物に蹂躙された過去が、レダの脳裏に浮かぶ。

「僕は、光でも闇でもない!ただみんなが期待してくれる!」

僕の瞳から、涙が流れた。

「勇者だ!」

そして、拳を握り締めると、レダの鳩尾に叩き込んだ。


「勇者…」

レダは笑った。

「…」

僕の拳は、レダの体を貫いていた。

「だったら…その勇者様は、どうして泣いているのかしら?」

レダは、震える手で、僕の涙を拭った。

「き、君を…殺したくなかったからだ…。誰も殺したくなかった」

僕の言葉を聞き、レダは笑った。

「懺悔?」

「ああ」

頷く僕に、レダはさらに笑った。

「神は、懺悔はしないわ。常に聞く側よ」

「レダ…。僕は、光ではないよ。闇だ。いや…闇よりも深い闇だ」

僕は、嗚咽した。

「…勇者赤星…」

レダは、自らの指についた僕の涙を見つめながら、こう言った。

「最後に、歌ってくれないかしら…。あの歌を…」

「え」

「私へのレクイエムとして」

レダは、自ら僕の腕を取ると、ゆっくりと体から抜き取っていく。

「お願い」

そして、微笑みながら、海に落下していく。

「レダ!」

「歌って」

落下しながら、レダの体が消滅していく。

「うわああああっ!」

僕は絶叫した後、Yasashisaを歌った。


レダは、光に分解されていきながら、目を閉じた。

(歌は…いい)

瞼の裏に浮かぶのは、赤星浩一が自分に歌ってくれている姿。