李狗がいつもと同じ、ほんわかとした笑顔で言う。
『今日は夜も遅いし、そろそろ帰ったほうがいいよ。でもその前に、名前教えてくれないかな?俺達、出待ちしてくれた子の名前を覚えて、ファンレターとかインストとかで確実に記憶に残してるんだ。だから、また今度出待ちをして名前を言ってくれれば、ああ、この前の子だね、ってなれるからさ』
大好きなバンドのメンバーが
私の名前を覚えてくれる。
この時から私はさらに
『VallFlea』というバンド、
そして恭太に
惹かれていったんだ…
『藤崎…美紗(みすず)です』
そして私は、自然と名前を口にしていた。
『みすず?どういう字?俺、普通の鈴の方しかわかんない…』
恭太が困ったように眉を下げる。
『あ、鈴じゃないです。糸辺に少しって書く[紗]って字に、美っていう字で美紗(みすず)って読むんです。』
『へえ、珍しい字なんだね!美紗ちゃん、か。…あ、やばい。時間ねぇ…ごめんね美紗ちゃん。俺達これからまた打ち合わせなんだ。今日は本当にありがとう!また会えるの楽しみにしてるよ!だから、また会いに来て貰えると嬉しい。な?貴之、李狗』