屋上からでて玄関に行くと、ほとんど
生徒はいない。大抵は部活か帰宅部で
もう家に帰っているかだから、この
時間帯は生徒と会わずに帰れる。
外靴がなくなっていた。「・・・」
だからといって動揺することも
ないのだけれど。鞄から替えの靴を
出すと履いた。そして上靴を一応鞄の
中に入れておいた。これなら朝、
画鋲を入れられることもないだろう。
早く家に帰って昼寝しよう。そして
起きたら星を見よう。空を見よう。
空は皆の屋根だから。皆と繋がってる
って確認できるから。

*   *   *   *   *

あの子はおびえてた。何に?俺に?
いや、違う。過去に囚われて、自由に
生きることを拒んでる。昔は俺も
そうだった。だけど今は違う。あの子
に教えてあげたい。救ってあげたい。
俺にできることをやっと見つけた。

*   *   *   *   *

「んむぅ・・・・ん・・・・っ」
大きく伸びをする。いつから寝てた
っけ・・・。時計を見てみると6時を
少し過ぎていた。2時間近く寝ていた
ことになる。もうそろそろ夕飯かな。
香ばしい香りが私の鼻を擽る。
窓を開けて空を仰ぐ。茜色に染まった
空は静かに夜の闇を迎えようと
していた。いろんな家から夕飯の香り
が立ち上り、子供の無邪気な声が
聞こえる。今日もこの景色だけは
変わらない。