「“私”の事を、知っているんですか?」
「は?なに言ってるんですか?」
怒ってる。
ひしひしと伝わってくる。
「裕一郎さん、かなりまいってたんすよ。見てられなかった‥何も言わずにいなくなるなんて‥最低だ。」
いっきにまくし立てられる。
「あの‥…すいません…」
わけもわからず謝ってしまった。
「今、裕一郎さんに連絡しました。逢ってください。」
その人知りません。とは言えない。もしかしたら知り合いかもしれない。
でも今のままでは逢っても‥
「ユキ?」
「克哉さん‥」
不安そうに近づいて来た。
「‥誰?」
「幸さん‥どういう事っすか?」
怖さが一層増す。
「…新しい男ができたから、裕一郎さんの前から何もいわずにいなくなったんっすか!?」
「ち、違います!!」
そんな事はない。
そんなだったら私は“私”が許せない。
「じゃ!!どうして!!」
そんなの、



「ユキには一年以上前の記憶がないんだ。」


「え…」


その時花火が始まった。

大輪の花が空いっぱいに広がる。

「名前はないと大変だから俺が仮に付けたんだ。まさか本名もユキだとは思いも寄らなかったな。」

「記憶が…ない?」

若い男は呆然として、私の肩から手を離した。