『なんだよ。その目は‥』

まだあたしに力があって、

睨んでいたらしい。


その時


克哉の手があたしの首にきた。


『!!!』


苦しい‥

止めて‥


最後の力を振り絞って、克哉の腕に手を伸ばした。

涙が流れた。

怖くてなのか、悲しくてなのか、あたしにはわからなかった。


『‥‥ッ!‥‥』
そうして克哉が離れた。

ごぼっごほっ‥

『‥‥もぅやめて‥やめてよ‥‥』


涙が沢山溢れた。

『‥‥‥ごめん。俺‥俺‥



幸、ごめん!!!』


『やめて、触らないで‥』

『幸‥―‥‥』


そのままお互いにしゃべらず、その場も動かなかった。

ちらっと克哉を見ると眠っていた。

あれだけの酒の量で眠くなるのは当然なのか‥


あたしは財布の入った鞄だけを持ち気づかれないようにそっとアパートを出た。

町は明るくなり始めていた。

昨日帰ってきた道を戻る。
自然と歩調が早くなった。

逃げなくちゃ‥‥



電車にのり、新幹線にのり、

どうやって切符を買ったのか覚えていない。

よく買えたと思う。
よく地元で降りたと思う。

あたしが次に記憶があるのは、

『幸?』