「幸…」


まるで花火が光を吸い込むように、辺りは段々暗くなりだした。

幸の頬に光が反射する。

幸の表情は…

「裕一郎さん‥」
泰智が困惑したように俺の腕を引っ張った。
そこで幸の隣に男がいることに気がついた。

俺の頭は困惑し始めた。

「どこか店にいけるといいんだけど‥そこで話をしませんか?」
隣の男は平然と、そんな提案をした。


「いらっしゃいませ〜」
陽気な店員の声がやけに響く。
「居酒屋はまずかったすかね‥」
「‥いや‥」
24・5歳の俺達に切羽詰まった話を静かに出来る店なんて、持ち合わせていなかった。
ましてやこんな田舎街‥開いている店なんて、たかがしれている。

幸は目の前のウーロン茶を見ていた。


ウーロン茶‥

『じゃ、まず、生〜!』
『一番がお前かよ!』
『え?いいじゃん。居酒屋入ったらまず生ビールでしょ。』
『女なら、じゃあたしも‥くらいでいいんじゃないですか?』
『えーやだやだ。いいたいもん。』
『なんだよ。それ‥』


そんな風に笑いあっていたのにな…
「あの幸さんが記憶喪失って本当っすか?‥」
やっとウーロン茶から目線を上げた。
「はい。」